従来我国においては河川改修計画に経済的な考慮は知らず知らずの内に払われてきたが、昭和25年に建設省中安技官により千代川の改修計画に経済的な考慮が具体的な数値をもって示された。その後諸氏により経済効果について多々提案されたが、本文は中安技官の提案する防災量の考え方{すなわち防災量Eは、災害費をP、確率をWとする時水位h1(確率w1)よりh2(確率w2)まで堤防を高めることによって得られる}を平易にかつ実際的に述べるものである。経済効果には大別して、1)超過便益 2)便益費用比率 3)国民所得増加額 4)投資所得比率 5)投資回転率などの要素があるが本文では、1)超過便益、2)便益費用比率、の2点の算定方法を述べる。治水事業の便益計算は保全便益が行なわれない場合に起る洪水被害を防止する効果で、一般的には頻度の洪水確率を加味して算定した年平均被害額を対象とする。保全便益の算定には過去の統計資料により洪水確率計算を行ない、水位~被害曲線などを利用することにより年平均被害額を算出する。また被害額の算出には実例の洪水被害と同被災地域の資産、または生産物とから被害係数(被災率)を求め、水理条件を加味して被害額を算出する。本経済効果の測定は昭和36年7月洪水並びに最大想定(計画洪水位)氾濫を対象として算定する。これをして河川改修における経済効果の推定の一方法とするものである。 |