幌延試験地の土壤は第3紀層シルト岩を母材とする未熟な酸性褐色土であって、その物理的性質は母岩の構造、性状によって顕著な影響を受け、機械的な諸性質、3相分布、透水性、通気性などの性状は概して良好であり、オホーツク海沿岸の台地帯に広く分布する典型的な重粘性土壤に比較して問題の少ない土壤であるが、孔隙分布が不連続的であり、有孔保水量が少なく、表土は乾燥に傾き易い傾向を持つことを第1報において(第5回開発局技術研究発表会報文集 p.261)指摘した。一方、幌延試験地を中心にした西天北地帯における、今後の農業開発の中軸は草地農業にあるといってよいが従来から指摘されているように、牧草の生育によって道東、道北地帯における天然の水分供給はかならずしも十分であるとはいい難い。特に、5~6月にかけての時期は著しい乾燥期になっており、これが草類の旺盛な生育期と重なるために、土壤の水分保留量の少ない地帯にあっては水分需給に不均衡を生ずる危険性がある。以上の2点から、幌延試験地を中心とする西天北地域の重粘性土壤地帯の草地においては、牧草を中心にした生態系における土壤-水分-牧草の相互関係を解析し、調整することは草地生産力の増強の目的にとって重要な事項であることが理解される。本報においては、以上の観点にもとづいて実施した地下水位調節による牧草栽培試験の中間結果を中心にして、重粘性土壤地帯の草地生態系における地下水調節の効果について検討を加える。 |