名寄川は、天塩川の支流で、流域面積、713km2、幹川流路延長63.5kmの中河川であり、改修計画の規模を規定する計画高水流量は、1,200m3/Sとなっていたが、今回、昭和30年の大出水を再検討した結果、1,490~1,640m3/s程度の流出があったことがわかり、基本高水流量も単位図法を用いて、1,800m3/S、と改められた。しかし5割りの増し分である600m3/sの処理は、1,200m3/sぎりぎりの姿で進められてきている名寄川の改修工事にとっては、この改訂のみでは不可能なので、技術的にも経済的にも、満足できるように河道計画をねり直して流過能力の増加を計り、できるだけ河道負担を多くし、その残余は、他の方法で処理することにしたのである。本文では、経済的な諸問題をふまえて、その限定と決められた1,400m3/sが、技術的に、すなわち1,400m3/sを流したときにも、現計画高水位を越えることのないように、局部的に低水路拡幅を行った結果の安定縦断形状が現在の計画縦断形状とどのような関係になるのかを吟味したのである。勿論、現在の1,200m3/Sの場合の計画横断形状が計画縦断形状に対してのそれも含んでいる。築堤かさ上げを含ませずに流過能力を増加させるには、低水路の拡幅しかないが、縦来から低水路の掘削計画を立案する場合には現況をみつめて、適当な区間ごとの平均値的な数値をもって計画低水路敷幅としてきた。このことは、この数値が維持しやすい幅を指向することが知られているからである。しかし、名寄川においては、上記の経験的な数値を越えて拡幅することになるわけで、広すぎる低水路のもたらす問題は非常に多い。しかし、本文では、主として縦断方向の先堀・堆積の均衡・不均衡から拡幅の是非を論じたのである。与えられた縦断形状を用いての安定縦断形状の算定には、増田、河村の提案した方法を用いた。 |