北海道の建築には『寒冷地』という言葉がついて廻って来ている。この『寒冷地』の三字は時に弁解の用にもちいられているが、事実は明治の初期から大きな負担となり、これまで幾多辛酸の歴史が建物に刻みこまれている。建物の第一義である耐候性の問題はただ経験だけでは解決することはでき得なかった。根本的な分析から始め、学究的に究明しなければならないが、実体は代替式や泥縄式などの安直工法が採られていたように思われる。従って、デザインにおいても、施工技術においても、また建築工事費の点でも、温暖地のそれに比較してマイナスであることは否定できない。これらの解決策として室内気候の研究、材料の開発、乾式工法およびプレファブ工法の研究が進められ順次その成果があげられて来た。札幌地方法務合同庁舎はその大半を乾式工法でフイニッシュしたもので、これまでの寒冷地建築のあり方に対して工期の短縮、品質の均一化、施工精度の高度化を論ずる一つの資料となることを目標として施工したものである。現段階においては、まだ良否巧拙の結論的なものは見出せないが、、少なくとも発展的考察によって進めたことを認めてもらいたいと思う。本報告においては、それらの施工過程中、外壁部分の材料とその施工について簡単に述べるものである。 |