土壌はその起源、発達段階に応じて固有の物理的性質をもっている。土壌の物理的性質は化学的、生物学的性質と同様に土壌の肥沃度にとって重要な要素であるが、同時に土壌の生成過程を規制する内在的要因として重要な意義をもっている。土壌の物理性は、土壌体中でもっとも可動性の要素であり物理化学的に特異な性格をしめす水と結びつくことによって、広範囲にわたって、きわめて変異性に富む役割を演んずることになる。したがって土壌の物理性を生成論的な見地から解析しようとする場合、水分状況との関連性をもっとも重要視しなければならないであろう。しかし従来の研究では土壌の水物理学的諸性質(Hydro-Physical Properties)と土壌の水分状況(Water Regime)を土壌の生成過程と結びつけて、量的に検討を加えた例はきわめて少なかったようで、土壌の物理性と水分状況、ならびにこれによって規制される土壌断面の分化と発達の過程の相互関係を量的に解明していくことは、当面するもっとも重要な課題である。このことは単に研究課題としてではなく、重粘性を呈する台地土壌の改良を考えるうえでもきわめて重要なことがらである。何故ならこの種の土壌においては、物理性の改善と水分環境の改良が土地改良の終極的な目標となっているからである。以上のような観点から、土壌断面の形態的特徴と種々な物理的性質の相互関係、水分状況と土壌の水物理学的性質などについて、オホーツク海沿岸の台地土壌を対象にした組織的な研究が行なわれている。本報ではもっとも重要な水物理学的性質の1つである透水性をとりあげて土壌断面の形態的特徴との関係を追求した結果を報告する。 |