積雪寒冷地においては、冬期交通の安全を確保することが、きわめて重要な課題の一つである。冬期路面の維持に関して、塩類などの薬剤を用いることは、近年有効な方法であることがわかってきた。しかしながら、北海道では低温、積雪大という気象条件のために、薬剤を用いて路面の凍結防止あるいは雪氷の除去を行なうことは非常に不経済であり、また、この方法が適用できる期間はごく限られている。目下、機械的な除雪が広く行なわれているが、なお舗装の表面に残されている雪や新しく降った雪が交通車輛に踏み固められて氷殻(icecrust)となり、また日中気温が一時的に上昇し、雪が解けて再び結氷するときわめてすべり易い状態となる。したがって現在の北海道では、交通の安全を確保するために、雪氷を完全に除去することよりはむしろ氷結路面のスベリ止め対策を考慮することが先決問題であると思われる。氷結路面のスベリ止め対策としては、従来はたまたま砂や石炭殻などの摩擦材を散布する方法が用いられてきたが、単に摩擦材を散布するよりも、摩擦材に塩類を混合することによって、スベリ止めの効果およびその持続性を増大させることが考えられるようになった。これは摩擦材の粒子に付着する塩が氷を融解し、粒子と氷の付着性をよくすることによるものである。このような研究は近年諸外国でも行なわれているが、それぞれの地理的および気象的条件などによって異なるから、北海道においても適当な方法を研究する必要があると思われる。本報告は、塩化カルシウムを混合した砂を氷結路面に散布して、その摩擦抵抗を最大にするような塩化カルシウムおよび砂の適用量を求めるために、室内実験および現場試験を行なった結果を総括したものである。すなわちまず予備試験として、室内実験的に氷の面に塩化カルシウムを混合した砂を散布して、摩擦抵抗を測定し、次にこの実験の結果に基づき、各期間、実際の氷結路面および積雪路面において、現場的な測定を行なった。また、散布用砂の作業性の面から、準備すべき砂を氷結させないために必要な塩化カルシウムの混合量について検討を加えた。 |