海岸港湾の対波構造物の計画設計、あるいは台風などによる災害防止のためには、その海岸における自然現象とくに波浪の特性を的確に把握する必要がある。波浪の発生成長は台風、異常低気圧時の風の吹き方に大きく起因し、そして気象条件はほぼ年周変化をすると考えられるから、ある観測点での波の波高周期の頻度分布は1年間の観測資料によってかなり正確に求められる。また深海波は来襲海域ごとには連続的に変化するから、設計波はこれらに水深変化、屈折、回折などの地域的条件を考慮して決定するのが合理的である。近年、波浪計の整備改良が進み、観測技術が進歩し、北海道の港湾漁港での観測資料も蓄積されており、担当課では昭和37年度にこれら既存資料を収集解析して、まず観測地域ごとに波高周期の発生確率を求め、これらを総括して道内沿岸の波浪分布図を作成する作業を進めてきた。しかし、従来はともすれば設計波の検討という点に重きがおかれたため、荒天時の観測に主力が注がれ、平常時の欠測が多く、この研究に合致するような年間を通しての資料がなく、所期の結果を得ることができなかった。しかし、沿岸波浪台帳を整備して統計的解析を行ない、これを港湾に関するすべての計画に応用することは、自然条件を合理的に採用するうえでゆるがせにできないことである。このような広範囲で長期にわたる問題の処理には、各建設部の協力のもとにあらかじめ具体的な調査要領を決め規準化した整理方法でまとめて総括するのが解決を早める方法であり、昭和38年度以降の要望課題としてとり上げられた理由である。 |