今日までに築造されたアースダムの多くは、設計条件を満足させるように施工管理されたはずである。しかし、築造された後において、堤体を構成する土の力学的性質が、はたしてどの程度に保たれているか、といった検討についてあまりその例をきいていない。こうした、既設アースダムの維持管理、および改良にあたっては、どうしても、それら力学的諸元を正しく把握しておく必要がある。たとえば、本年度までに筆者らの研究室で、調査の一部を分担した、札建管内幌加内地区雨煙内ダム(昭和4年築造、同8年嵩上げ、現在、堤高14.6m、堤長293m、堤体積87.000m3、貯水量181万立米、は、現在も用水源としての機能を十分にはたしているが、昭和40年度より直轄かんかい事業として、地区内の新規開田と用水補給のため5.9m嵩上げし、総貯水量370万立米に増加させる計画が立てられている。よって既設のダム材料がもつ力学常数(材料の強さなど)を明らかにするとともに、新規盛土用材料に対して、綿密な試験を行ない、既設部分とのなじみや、全体としての調和に重点をおき、その選択や締固め基準の策定をすることが肝要である。本文は、上記の方針に基づいて行なった調査結果の中から、既設ダム非遮水部分を構成する。レキ交り土の強度推定に焦点をしぼってまとめたものである。 |