この報告は昨年の研究発表会に「牧草地におけるミミズの分布と生態について」と題して発表したものの第2報であるが、今回は題名のミミズを土攘動物とあらためた。これは、39年度からはミミズだけでなく、草地の土攘に住んでいるはかの動物もあわせて調査したからである。ミミズ以外の動物としては、大型のものでは、主に植物質をたべる、コガネムシの幼虫や、ヤスデなどがあり、主に動物質をたべるものには、クモ、ムカデ、ゴミムシ、ハネカクシなどの甲虫類があり、もっと小型のものではダニの類、トビムシ、ヒメミミズなどがある。また更に小さな動物では、ネマトーダ(線虫)が重要なグループであるし、原生動物の量もかなり多いのである。土攘の中にはこういう動物群の他に、カビ、放線菌、バクテリヤなどの微生物が、大量に繁殖しており、その種種の働きは、すでに多くの研究によって明らかにされている。これらの生物たちは土の中を餌や、安全な場所を求めて動きまわり、土攘の構造を変える役割を果しているが、その運動のエネルギーはすべて、その土攘に生育する緑色植物が光合成で固定する太陽エネルギーにあおいでおり、植物の光合成が活発であれはあるほど、その土攘中の生物の活動は旺盛になる。いま外部から一切有機物を投入することがないものとすれば、牧草地においては、牧草の生産量が大きい程、つまり、土攘中の生物の餌が多い程、彼らの活動は盛んになるものと考えられその作用は種々の形で、彼らの住んでいる土攘及ぼされ、ひいては牧草の生育に影響するであろうし、この牧草、土攘、土攘動物に加えて草地を管理する人間、そこに放牧される家畜などの間に働きあう力のバランスが程よく保たれたときに始めて草地の生産力が安定し、発達していくものと理解される。イギリスの動物生態学者Macfadyenによると、牛の放牧地においては、草に固定されるエネルギーのうち1/7は草の呼吸で失われ、わずか1/4が家畜ないし草食動物に餌として取り入れられ、エネルギーの2/3は枯死した有機物として直接土攘に流れていくといわれている。この有機物に家畜などの糞尿中の有機物がプラスされて、土攘有機物を構成しているが、これがもし年々分解されずに蓄積した場合、土攘中の可給態養分がたちまち減耗してしまうことは、泥炭地の例で明らかである。この有機物を次々に分解して養分の固定化を防ぎ植物生産のため年々順調に回転させているのが、土攘中の各種の生物である。中でも菌類、細菌類など微生物の作用が量、質ともに極めて顕著であり、その重要性はいうまでもないが、たとえその量は微生物に及ばぬとしても、その働きを促進させるものとして、ミミズを始めとする土攘動物群の価値が、強調されてよいとおもわれる。地中動物による草地土攘保全調査(昭和39~41年)のねらいは、これからの草地開発事業において、こぅいう土攘動物の働きを、積極的に利用することが、造成した草地をすみやかに安定させる。一つの有力な手段となるものであることを明らかにし、更に進んだ段階の調査研究の基礎資料を提供しようとするものである。まずその大きさ、形態、習性からみて、第一に対象となる動物はミミズであって、これを中心に調査を進め、他の動物群はそれを関連づけて、併せ検討することにしている。今回の報告は39年度調査成績のうちから、北海道の草地に普通にみられるミミズの数種について、分布の特性を報告する。 |