十数年前までは治水計画とくに河道計画の樹立とその施工法は、経験に頼るのが一般であったが、河川工学、水理学の進歩によって流水の中の砂礫の運動機構などが、いろいろな研究によって明らかにされるにつれて、河川の流れとその境界の変化が理論的に取り扱えるようになってきた。とはいえ、すでに行なわれた研究結果と実状との間には、まだかなりの差があって、今後の研究をまつところが多い。我々がいまとりあげている河床変動に関する研究は、その中でも最も大切なものであって、その目的と意義もおのずから理解されるであろう。昭和41年度の研究について昭和41年度の調査研究は、昭和40年度実施の継続であるが、特に次の諸点に力を注いだ。(ⅰ)調査研究対象河川の増昭和40年度までは12河川を指定して研究を行なったのであるが、各河川とも均等な調査が実施できず、研究項目別にみると、足なみが揃っているとはいえなかった。昭和41年度は対象河川数を増すよう努力した。(ⅱ)調査内容の向上観測器具の整備とともに、観測回数の増を計り精度の向上を目指した。(ⅲ)安定河床勾配の計算と支配流量の推定昭和40年度において4河川だけであった、安定河床の計算を指定した。河川のほとんどで行なった計算に当っては、流量をいろいろ変化させ、支配流量の推定を試み今後の河道計画のために大きく前進した。(ⅳ)粘性土河床の洗堀の研究石狩川開建が北海道大学へ委託した研究のあとを受け、土木試験所で幾春別川を対象に現地調査、模型実験を行なった。このように年々河床変動に関する調査研究は、質・量共に向上しているが、これは各建設部の担当者による格段の努力の賜であって、河川技術の将来を考えるとき、非常に喜ばしいことである。今後とも資料の蓄積研究の前進をはかり、ゆくゆくは外的条件を把握するだけで、その河川の将来の姿をはっきり見通せるようにしたものである。 |