土木分野においては、力学的に説明がつきにくい、実測実験も容易でない一種の波動現象とも言うべきものを、対象とする場合が少なくない。降水量、河川流量その他各種の水文諸量は自然界における物理的要素と確率的要素に支配される不定量であって、諸般の水工計画に際し、これらをどのように評価し、あるいはいかにして計画の規準を定めるかは、きわめて重要かつむずかしい問題である。これに対し、主としてこれから水文諸量の系列を、ある法則にしたがう確率過程よりの実測値とみなし、その間に内在する統計法則を追及しようとする接近方法がある。このような応用統計学の一分野を水文統計と呼んでいる。水文統計学の発達にともない、確率降雨および確率洪水の概念が一般的に普及して、河川計画の合理化に大いに貢献しているが、実際上は確率論の根本をなす水文諸量の無作為性(純偶発生)の吟味が充分行われていない。この論文は、北海道の主要地点の年最大雨量の多くの資料について、分布型、地域的な分布の考察、確率紙利用による確率雨量の概略推定の一方法、さらに最近発展した特系列論的な解析を行って、たとえ現象論的な意味ででも、その固有固期等が見出されるならばその変動の将来を予想することもできるし、今後の力学的研究のための一段階としても役立つものと思われる。今回はその第一報として報告するものである。 |