豊平峡ダムサイトはU字型をなし、左右岸とも岩石が露出する部分が多く切り立った峡谷を形成している。ダムサイトの地質は安山岩熔岩とその上を覆っている集塊岩熔岩より成っている。一見強壁に見える岩盤もその内部には複雑な弱岩部を挾在している。右岸上部には深度20~30mに達する風化作用が見られるし、左岸にはアーチダムにとって最も不利な河道に平行な断層11番(50~80cm粘土5cm)と73番断層(40~60cm、粘土20~30cm)が存在する。11番断層はEL420mから下部に存在し、地表からの距離も20~30mと近く、下流で地表に露出する恐れもある。また73番断層はEL420m以上、中標高部にあり、下流部で69番断層とすべり面を形成する恐れがある。さらに河床部は、左右岸に比べて非常に軟質な岩が分布しており100m級のダム基礎としては大きな問題となる。ここにおいて、豊平峡アーチダムの基礎設計に際し、岩盤内応力の解析を行なうものとした。解析は、左岸断層に関して二次元とし、又河床部に対しては三次元で、その応力分布を求め、各種試験で得られた岩盤の強度より、断層及び岩のセン断破壊に対する検討を行ない、その安全率について論ずるものである。 |