軟弱地盤は、チュウ積平野に構成されるが、このような平地部には都市が発達しているため、建設事業の対称となる機会が多い。特に、近年の異常な人口都市集中は、さらに、これに拍車をかけている。したがって、近年のわが国の土と基礎あるいは施工法についての問題には、軟弱地盤対策に関するものが、常に大勢を占めてきた。軟弱地盤の土質工学上の問題点は、セン断強さが小さく、圧縮性が大きいことである。このような地盤上に盛土を計画する場合は、地盤のスベリ破壊と圧密沈下に対する検討を十分に行なわれなければならない。盛土のスベリ破壊に対する安定や沈下を検討する理論計算方法は、古くから多くの人々によって研究されているが、まだ不十分な点が多い。さらに計算に用いる土質常数を求めるための、土質調査法や土質試験法は、近年著しい発展を示してはいるが、まだ、自然地盤の複雑な性質を正しく表現することはできない。したがって、計画に際し、盛土のスベリ破壊に対する安定や沈下について検討したにもかかわらず、施工途中でスベリ破壊を起こした例も時折見受けられる。もちろん、このような事故の中には、計画に当って、過去の慣習だけに頼って、事前の検討を怠ったことによるものも決して少なくない。ここでは、軟弱地盤における盛土の破壊例のうち、比較的土質調査資料のそろっているものについて、スベリ破壊に対して現在採られている理論計算を適用し、実用的な安全率について検討を加える。また、これらの現場で採用した破壊後の対策工法の実態について考察を加える。 |