当地方は、北海道では函館江差を中心として開発の歴史は古く、早くから水田も開かれているが、農業の土地基盤の整備がおくれ、最近になってやっと農業の近代化がさけばれるようになった。すなわち、機械化に対応した圃場整備や、水稲冷害防止のための低温時における深水かんがいなどのための用、排水路の整備などの計画が盛んになっている。したがってこれに伴なう用水の増加から、農業水源手当のダムなどの築造に関する調査計画を各所で実施している。しかるに、近年水田は、河川の中・下流部の平野部より段々上流部の沢深く迄耕作されている現状である。水田面積の増加と用水需要の変化によって、貯水容量の大きいダムなどの水源施設の要求とは反対に、集水面積の小さい所に、ダムなどの水源施設をつくらなくてはならない状態に来ている。今迄北海道の水源施設は、水量も豊富で、自己流域の大きい所に造られていた関係で、かんがい期の河川流出量の検討のみで済む事例が多かった。したがって、かんがい期における流出や、河川下流部の流出調査は、数多く実施検討されているが、年間を通じた河川上流部のダムを計画するような小流域からの流出資料、および検討はきわめて少ない。ここに当地方で、現在比較的長期間の、しかも信頼出来る資料を整理し、今後の新しい水需要にたいし、出来るだけ妥当な水利用計画の参考として検討を加えたものである。 |