マスコンクリートの硬化に伴う温度上昇は温度応力を生じる。コンクリートの強度がこれ等の応力に対して充分強ければ、コンクリート構造物に亀裂等の損傷を与えることはない。しかし、ダムのようなマスコンクリート構造物では、一般に自然放置した場合にコンクリートの初期強度よりも温度応力が大きくなるのが普通である。このように大構造物の亀裂損傷は表面の温度勾配により生ずるものと、コンクリート内部の温度が外界の温度と平衡する場合の温度降下に基づく収縮変形が岩盤その他に拘束されるために生ずる内部亀裂に分けられる。この他マスコンクリートに損傷を与える要素は種々考えられるが、本論文は、主として問題を熱応力とコンクリートの初期強度に焦点を絞つて研究を進め理論解析、実験、現地実測を通して、コンクリートの施工管理に対する温度規制の規準を定める所存である。さらにアーチダム等の場合は、ダムの一体性が要求されることからJoint-Grautについても触れることとする。初期コンクリートの温度上昇を規制するためには、一般にプレクーリング、パイプクーリング等が行なわれているが、これ等のコンクリート冷却に関しては、ブロックの大小、境界条件、コンクリートの塑性的性質等も大きな影響があるものとして考えられる。本論文は、題意の第一報として、豊平峡ダムコンクリートの観測記録より検討を加えて行く。また、Joint-Grautについては、その計画について触れておくにとどめる。 |