近時における橋梁技術の進歩には目覚ましいものがあり、本州四国連絡道路橋-夢のかけ橋-の実現も間近になっている。この橋梁構造物のうちでも床版に関しては、進歩の少ない部門の一つとしてあげられよう。欧米においては、古くから軽量化と工期短縮の容易な格子骨組床版が普及しているが、わが国では、通気および通水を目的とし、港湾用棧橋、若戸大橋などの一部に使用されたに過ぎない。一般橋梁は、コンクリート床版および鋼床版に現定されているといっても過言ではない。鋼橋の床版として従来一般に使用されてきたものに、鉄筋コンクリート床版と鋼床版がある。鉄筋コンクリート床版は、工費が低廉であり、剛性が大きいなどの利点を有するが、施工工期が長くなること、死過重が大きいなどの欠点をもっており、鋼床版は、軽量で強靭であるが、高価である。最近、長大吊橋、高速道路の高架橋、H型鋼橋梁などの橋床構造として、これら両者の利点を兼ねそなえた軽量床版やプレハブ床版の必要性が強調され、その開発が期待されていた。格子床版の特色を十分活用するには、設計面および施工面に疑問点を内蔵しているので、これの開発には実験研究が必要である。幸い、最近にいたり大手鉄鋼メーカーがⅠ型鋼を主鉄筋に使用した鋼格子床版に関心を持ち意欲的に研究開発を行ない、ようやく生産の段階に至つている。ここで小断面のⅠ型鋼を並列し、それらを適当な横方向部材で連結して構成される格子状の骨粗にコンクリートを充填して造られる床版即ちコンクリート充填型Ⅰ型鋼格子床版を、近年老朽化が著しい一般国道235号線鵡川町地内の鵡川橋ローゼ桁径間(橋長80.90m、巾員6.00m~2連の内、1連)の床版に使用、施工した結果を報告するものである。 |