最近、波浪予知の必要性が急激に高まっているが、実際問題の要請目的の一つに、海岸保全事業および港湾建設計画のための波の性質の解明が含まれている。開発局においても、工事を施工する場合の作業計画を決めるために、波浪の予報が問題とされている。予報法としては、従来からSMB法、PNJ法、Wilson法などがあるが、各方法とも、どの程度の信頼度があるか、はっきりしていない現状である。そこで、波浪の実測値と推定値の比較をして、その信頼度の把握を一例をもって試みた。比較の対象とした資料は、昭和43年4月~44年1月の石狩湾における波浪の実測値のうち、波高2.5m以上の高波時の記録から抽出した7例で、それぞれについて、6時間ごとの天気図から海上風速を求め、SMB法およびWilson法の二つの推定法により、波高、周期と到達時刻を計算し、それぞれの推定値とした。実測値との比較に際しては、両値の単なる数値の比較ではなく、相互の時間的な変量による相関性を検討するのが至当と思われる。すなわち、時差による両値の相関係数を求め、そのピーク時の係数を実測値との補正値として、抽出例別に算定した。その結果、全般的にみて、Wilson法よりSMB法の値が実測値との相関が密で、各例ともその気圧配置、推定法および波高、周期別にそれぞれほぼ類似した傾向を示した。SMB法のSMBの波高においては、時差が±0で相関関数R≒0.8~0.9、周期においては時差が+3でR≒0.4~0.9の相関を示し、この時差による推定値の統計的な処理を行なうのがよいと思われる。 |