大気圏および地上における水循環は無限に繰返されるが、降水量の単位時間当りの水量は限られている。近年特に北海道開発は進展し、更に産業経済の高度成長及び生活水準の向上のため水需要は急増するが、それに対応して、安価で豊富な水供給を行なうことは、地域開発を円滑に進展させるためにも最も重要な施策である。また多量の用水需要は一地域に集中するので広域的な総合開発の視点なら利水計画を考慮することが必要である。一方生活水準の向上、工業出荷額の増大は反面多量の廃出物を生み出し、健康、生活環境を悪化させるので汚濁防止対策は用水計画と併せて考慮されなければならない。即ち、河川域の水の量、質両面における『Control』が利水計画の根幹となる。従来より河川水の量、質両面についての諸調査を実施してきたが、各河川の利水計画を策定する手法には多くの問題点がある。そこで水資源の効率的な利用を策定するに必要な基礎調査、データ処理、各地域における水循環事象の解析などを当研究テーマとしてとり上げ、水資源開発、水管理についての技術の向上を図ると共に、それを修得することによって今後の河川行政に資することを目的としている。当研究テーマで取りあげる事項は次の範囲とする。1.水量イ 降雨特性 ロ 河川流出特性 ハ 水利用率 ニ 広域的水循環特性2.水質イ 汚濁負荷特性 ロ 河川の汚濁の挙動調査研究スケジュールは3ケ年として、それぞれの調査研究事項ごとに次のとおりとする。45年度 既存資料の集積、データ処理、水のControl手法開発のテストランを重点とする。また現地調査を併行実施する。46年度 資料に基づき技術開発、解析を重点的に実施する。47年度 水系の地域性を把握し、代表河川において利水計画の基礎資料の集成を完了する。45年度は石狩川、十勝川など一級水系に河川及び留萠川、阿寒川、声間川の計15水系について資料整理を中心に次の事項を調査検討することにした。降水量は地域性、季節性、経年特性、無降水期間特性を検討する。河川流出については、日流況の逓減、増水特性について検討する。利用率については、河川流出量の渇水特性及び利用状況と調査を行なうとともに利水計画上の基準量の検討を行なった。河道における水収支は資料の集積を行い表流水、地下水について検討する。汚濁負荷については汚濁負荷の現況図の作成、並びに代表河川について自浄作用の検討を行なう。なお、本報文は紙数の制限のため、河川毎の詳述は省略しましたので参考文献を参照されたい。 |