土壤改良工法の検討という課題は、農用地開発事業や圃場整備事業における、土壤改良に関連する一連の技術的な事柄の検討という意味に解される。ところが実際の工事の中での土壤改良では、単に施工上の技術的な問題だけでなく、施工に移す前の段階、すなわち工事計画時点での問題点も多く、この両者にみられる問題点を同時に解決していかねば、この問題の根本的な解決にならないと思われる。本報では指定課題の初年度ということもあって、工法における個々の問題点の調査、検討ということのほかに、現場機関において実際に施工されている一連の工事の中で、問題点を再整理し、その中で初年度に調査可能な項目につき検討した。短い期間での調査、試験ではあるが、その結果を示すとともに、若干の考察を加えてみた。なお土壤改良の意味するものは、多種多様であるが、本報では、農用地開発事業などで特に考慮されている土壤の酸性矯正つまり炭カルの施用と、土壤のりん酸固定に対処するためのりん酸質肥料の施用の二つとし、このうち土壤の酸性矯正をめぐる問題に的を絞り検討する。現在局内における農用地開発事業などで土壤改良資材としての炭カル投入量決定方法および施工の手順を整理し、その各工程における問題点を列記してみると、単に技術的に未解決のもののみでなく、酸性矯正に関連する基本的で、かつ学問的にも未解決な問題が多く存在することがわかった。例えば技術的なものとしては、土改資材と土壤の混和に関与する施工機械の選択など、基本的には末だ解決されておらず、慣行で施工されている場合が大部分であったり、一方土壤学あるいは作物学的な面からは、土壤酸性の実体は何かとか土壤酸度が作物生育におよぼす影響の生理学的な究明などと言ったことが、ほとんど手をつけられずに放置されている状態である。このようにまず問題点の整理を試み、それから未解決問題を見いだし、本年度の調査、実験のテーマとして取り上げ、一つ一つ問題点を解明していく方法を採用した。これらに関する調査・実験の結果および考察をかかげる。 |