一般に建設工事では騒音とともに地盤振動を発生されることが少なくない。とくに軟弱地盤での機械化施工では大きな地盤振動が誘因で建物などに物理的被害を与えることもある。一方、振動に対しては騒音と異なり、これを公害として具体的に規制している例は今のところ少なく、東京、大阪、その他若干の地方公共団体における条例にみられるに過ぎない。これも工場などの常時運転の機械を対象としたものであり、建設工事の振動は明確に公害としての規制の対象になっていないのが現況である。しかし、建設工事でも常に住民の健康保持と生活環境の保全を考慮しながらこれを実施すべきものであり、工事に伴なう地盤振動には十分留意する必要があろう。また、一旦このような振動に対し人体感覚に訴えた公害被害の苦情が発生すると、これに対する種々の試案はあるものの明確な規制基準が確立されていないだけに、適切に客観的にこれに対処することは困難である。そこでわれわれは、このような問題の解決を計る必要性が今後増々高まるものと予想し、建設作業に伴なって発生する地盤振動、住民に与える障害の程度および防振対策などについて十分な調査検討を加えることにした。本報告は、一般国道5号札幌新道の昭和46年度施工区間のうち軟弱地盤の一部において、施工機械の運転に伴なって発生する地盤の振動を測定し、距離による振動の減衰や人体感覚との関係でその実態を調査検討するとともに、振動軽減対策として、鋼矢板を打設した場合および溝を掘った場合の振動遮断効果について試験した結果を述べるものである。 |