最近斜面に関する災害は世論の注目をうけている。道路災害においてもこの種のものが著しく多発しており、その規模も大きい。斜面には自然斜面、人工斜面があるが、いずれにしてもその災害の主たる要因をなすものは、地質・地形および気象条件等である。これらの諸現象は、その規模・形態および崩壊する材料によって種々の呼び名が行われている。すなわち①地すべり②崩壊③崩土④崖崩れ⑤土砂流出および⑥落石等である。ここでは上の②③④をまとめて斜面崩壊と呼ぶこととする。斜面崩壊には崩壊する材料から、表土の崩壊、崩積土あるいは崖錐の崩壊、新期堆積物(段丘堆積物・湖底堆積物・新期火山砕層物等)の崩壊、風化岩の崩壊、基岩の崩壊および基岩の拡大崩壊等がある。そしてこれらは、上記のように地すべりは勿論他の諸現象も、地質、地形、気象条件(降雨、降雪、凍害)および地下水、地震等がその原因をなしている。これらの諸条件を具備し且これらの災害の予想される地域における道路の建設にあたっては、経済的条件、地形的条件およびその他の諸条件の許す限りにおいて、これらの禍根を絶つべく努力されている。しかし道路築造後斜面は諸種の自然の営力(乾湿、降雨、降雪、融雪、凍結、凍上、地下水位の昇降、地下水流路の変化、地震)によって風化し脆弱化して時間とともに不安定化していく。それてこの自然の営力とくに、年間降雨量及びその大小、降雪量、融雪の状況、および地震多発地域等は地域的に非常に差異がある。またこの自然営力に対する抵抗性は岩石の種類によっても亦極めて差異がある。さらにまた当然のこと乍らこれらの斜面の安定性はその防護施設の有無、種類および状態によっても異なる。しかしこれらは一般的なものでなお詳細に見るとそれぞれの中に特殊性がある。したがってその特殊性についても考慮されなければならない。本年度はこの調査の初年度として、一般国道37号の静狩~豊浦間、一般国道39号層雲峡付近および一般国道40号の音威子府付近について地質踏査を主とする調査を行なった。また留萠管内の主な斜面に関して地震探査を行い切取斜面の安定度について検討した。そしてこれらの諸調査結果および過去の資料から道内における斜面安定度の判定基準について考察した。本文はその内の留萠管内における例である。 |