北海道の築堤は未施工区間が多く不連続な状況で、破堤による災害もなかったが、近年築堤の連続区間が増加して来たため、これらの築堤の安全性を再検討することが治水上の重要な問題となって来た。とくに北海道には20万haにおよぶ泥炭地が主要河川の流域に分布しており、泥炭地に築造された築堤や蛇行部のショートカット箇所の旧川締切築堤などは弱点となると思われる。この意味において既設築堤についてその安全度をさらに確認することは、非常に意義深いことであり、この調査の成果が期待されるものである。一般に河川堤防には種々の安全性を確保することが要求されるが、今年度は下記の三点を中心に調査した。(1) 河川水位が上昇し、浸潤線が発達し、浸透水が裏ノリから流出する時の裏ノリのスベリ破壊に対する安定。(2) 河川水位の急降下の際の表ノリ面のスベリ破壊に対する安定。(3) 軟弱地盤上の築堤の破壊と沈下に対する安定。上記の(1)、(2)について要求される安定性は、堤体材料の物理的性質と締固め度および、これに伴うセン断強さに大きく左右される。また(3)については主として基礎地盤の土層構成およびセン断強さ、沈下特性、透水性などの土質工学的諸条件が大きな影響を与えている。そしてこれらの問題は洪水の水位、継続時間等に直接的に大きく影響されるが、今年度は既設築堤の土質工学的な品質の実態調査を主として行なうために、土質および施工条件ごとに指定された築堤の計画断面完成時における上記3項目について安全性の検討を試みた。 |