鉄はコンクリートで被覆されていると腐食しないので、鉄筋コンクリートの耐久性は半永久的であると考えられてきた。しかし、コンクリートのひびわれその他の欠陥部から水や腐食を起す物質が進入してくると鉄筋はさび始める。その際に生ずる水酸化第二鉄(赤サビ)は、もとの鉄の体積の数倍にも大きくなり、その大きな圧力によってかぶりコンクリートを破壊する。海岸や港湾の構造物では、鉄筋の腐食によりかぶりコンクリートがはげ落ちて鉄筋が露出している例が少なくない。一方、最近のように高張力異形鉄筋の使用が盛んになり、鉄筋の使用応力度が大きくなると必然的にコンクリートにはひびわれが生ずる。現在の鉄筋コンクリートの設計法は、ある程度のひびわれ発生は許容するが、そのひびわれが原因となって鉄筋を腐食させることのない程度にひびわれ幅を制限している。しかしながら、許容ひびわれ幅をどの程度にとればよいかを定めることは容易ではなく、諸外国でも種々の値がとられている。当所コンクリート研究室では、潮風の影響を受ける環境下におけるコンクリート中の鉄筋の腐食状態を明らかにし、防食対策に関する資料を求める目的で、昭和41年から留萠市の日本海岸で鉄筋コンクリート試験げたを暴露中である。今回は暴露してから5年経過した試験げたを取壊し、内部の鉄筋の腐食状態を調査したので、この結果について報告する。 |