滝里ダムでは、ダム完成から3年後である2002年6月にカビ臭が発生し、下流の水道利用者からは異臭味に関する苦情が寄せられた。その後2003年、2004年にも8月上旬から9月下旬にかけて、カビ臭の発生が確認された。滝里ダム管理所の調査によると、滝里ダムでのカビ臭物質は2メチルイソボルネオール(2-MIB)であることが確認されており、藍藻類の一種であるフォルミジウムテヌエの増殖が原因と推定されている滝里ダムにおけるカビ臭発生メカニズムの解明のため、現在までに様々な調査研究が行われている。一例を挙げると、杉原らはフォルミジウムの増殖と2-MIB 濃度を関連付けた水質予測モデルを構築しカビ臭発生状況を再現している。なお水質予測モデルでは、ダム湖水中に既にフォルミジウムが存在することが前提条件となっている。しかし現地ではカビ臭発生年と非発生年がある。湖水中にある時点までは存在しないフォルミジウムが、「いつ」「何が引き金で」出現し急激な増殖に至るのか、その条件やメカニズムは現在のところ解明されていない。より効果的なカビ臭抑制対策を検討するに当り、原因となる藻類増殖を引き起こす因子の解明が重要である。本研究では、まず現地調査により2007年夏季の滝里ダムにおけるカビ臭発生状況について確認する。また様々な条件下で現地湖水中の藻類増殖試験を行い、フォルミジウムが増殖するきっかけとなる要因を考察した。 |