直立消波堤は直立壁前面にスリット壁と遊水室を有する構造であり、高い消波性能と安価な建設コストを兼ね備えた優れた構造形式のひとつである。直立消波堤に関する研究の歴史は古く、その水理特性についてはかなり明らかにされてきている。その代表的な研究成果としては谷本・吉本らの論文が挙げられ、現在、多くの直立消波堤の設計において参照されている。しかし、この研究は水平床で基礎マウンドの無い条件での実験結果に基づくものであり、あらゆる構造緒元を適切に反映できるものではない。そのため水理模型実験を行って構造緒元を決定する場合が少なくない。しかしながら、直立消波堤の消波性能を左右する要因はスリット形状、遊水室形状など多々あり、全ての要因を考慮した水理模型実験には多くの時間と労力を要する。そこで、2次元断面水路における水理実験をPC上で行うことができる数値波動水路(CADMAS-SURF)を併用して、より効率的に断面検討を行うことを試みた。これまでにも小竹らによって横スリットタイプ直立消波堤を対象にCADMAS-SURFの適用性が検討され、その適用性の高さが報告されている。本報告は、縦スリットタイプの直立消波堤を対象としてCADMAS-SURFの適用性を確認し、具体的な断面検討を行うことにより、CADMAS-SURFを利用した断面検討の発展に資することを目的とする。 |