近年、我が国の社会経済を取り巻く環境は、少子高齢化の進展、生活の高度化・多様化、財政状況のひっ迫化など大きく変化しており、社会資本の基礎である道路についても、歩行者重視、環境や安全への配慮など多様化する国民ニーズや社会経済の変化に対応する21世紀に向けた道路整備が望まれている。これを背景として、20年ぶりに大幅に改訂された「道路構造令(平成15年7月)」は、道路の多様な役割と機能に十分配慮した道路計画・設計の考え方や、地域の状況に応じて交通機能や空間機能などを適切に考慮して基準を弾力的に運用できるという柔軟な考え方を重視している。北海道開発局では、地域に応じた弾力的な「道路構造令」の運用を図るため、従前の道路構造基準を定めていた「道路工事設計基準」を平成16年4月に廃止したところである。さらに、地域の状況に応じた基準の弾力的運用の観点から、北海道特有の積雪寒冷地の道路技術や構造規格を考慮した「北海道における道路構造の考え方(案)」、「道路構造インスピレーションブック2005」をとりまとめている。一方、良好な景観の保全、地域の潜在的価値発掘による魅力ある景観形成のため、「美しい国づくり政策大綱」が策定され、「景観法」、「国土交通省所管公共事業における景観検討の基本方針(案)」など実現に向けた取組が行われている。北海道開発局においても、道路の設計・施工・維持管理の各段階における道路と沿道の景観形成に関して、「北海道の道路デザインブック(案)」(旧・「北海道の道路景観整備ブック(案)」) をとりまとめたところである。本稿は、「北海道の地域特性を考慮した道路整備」(北海道スタンダード)の一環として取り組むべき道路景観の考え方や整備方法について、①地域特性や良好な景観形成に配慮した道路構造、②北海道の道路景観と道路デザインのポイント、③引き算による道路景観向上策から道路景観の課題や特徴について述べた後、北海道開発局における取り組み事例(新設改築、シーニックバイウェイ北海道における官民協働)を報告するものである。 |