流雨と流出の関係を解析することは、河川改修上の要請ばかりでなく、洪水予報の分野においても重要な課題である。水文学の歴史は比較的短いにもかかわらず、その進歩にはめざましいものがあり、各方面において研究されている種々の方法は、それぞれにかなりの成果を収めている。これらの方法のほとんどが降雨と直接流出との関係を論ずるものであり、従って解析の過程に全流出量から基底流量を分離する作業が含まれている。この分離の方法が必ずしも同一でなくまたどんな方法によるのがよいのかを判断するのがなかなか難しい問題である。建設省河川局が直轄技術研究会の要望課題の一つとして標記の問題、特に流出率について全国主要河川の解析を画一的方法で実施したものも前述の理由によるものと思われる。本編はこの解析の経過を総括して報告するものである。この課題は昭和32年度より採りあげられ、昭和35年度に至るまでの4年間にわたり継続して検討されたもので、各年度ごとに統一的方法で解析を行うという方式を採った。年次別の研究内容は次の4項目である。i)各観測所ごとにそれぞれの既往洪水につき流出率を計算する(昭和32年度)。ii)直接流出の分離方法を明確にするため、洪水低減部を解析する(昭和33年度)。iii)流域特性の検討(昭和34年度)。iv)当初の解析に使用した資料の補足および新しく流域を追加する場合には従来行った一連の解析を行うこととする(昭和35年度)。この解析実施に当たっては建設省河川局計画課および土木研究所水文研究室が解析方法、様式の立案と事務連絡を担当し部会の運営に当たった。 |