プレストレストコンクリートにおいて、ポストテンショニング方式では、シース内にグラウトを注入することによって、PC鋼の腐食を防ぎ、PC鋼-グラウト-シース-コンクリートの経路をもって付着力を与え、このことにより部材の耐久力を増し、曲げおよびセン断に対しても剛性と強さを増すことができるが、そのためにグラウトは注入が容易であるように適当な流動性と所要の強度をもち、かつ容積変化や水の分離が小さいことが必要となる。特に冬期に凍結気温となる地方では、凍結安定性ということも重要な性質として検討されなければならないことである。PCグラウトの凍結安定性とは、寒冷期にグラウト注入を行なって、これが凍結した場合、凍結による害を受けるか否かの判定を行なうものであり、例えば凍結したときグラウトは膨張し、その程度によっては周囲のコンクリートにも影響を及ぼすものと考えられる。したがって、PCグラウトは冬期に凍結しても容積膨張を起こさない、いわゆる凍結に対して安定なものでなければならないということができる。北海道土木技術会制定「PCグラウト注入施工指針」の第5条によれば、"グラウトの養生温度は、注入後5日間+10℃以上に保つのを標準とする"とあり、また、土木学会プレストレスコンクリート設計施工指針「PCグラウト指針案」の第9条では"少なくとも5日間、5℃以上に保たなければならない"としている。しかし注入後の養成期間は工期、工費の両面からなるべく短縮したいところであり、養生期間は使用材料、配合、温度などによって非常に異なるが、グラウト中に適量の空気泡を連行させることによって、内部に生じた微細な空隙が凍結圧力を減退させ凍結安定性に良い結果をもたらすものと考えられる。本文は、2社の普通ポルトランドセメントと早強ポルトランドセメントの計4種を用い、適量の空気泡をもつグラウトを10℃で1~4日間養生して、凍結安定性試験を行なった結果から寒中グラウトに必要な養生日数を短縮する方法について述べたものである。 |