北海道の河川の河岸には、主にヤナギ類で構成される河畔林が多く分布している。これらの河畔林は、河川景観や河川の生態系の構成に重要な役割を担っている一方で、洪水時には水位の上昇や流木の発生原因となることが懸念されている。適切な河川管理を行うためには、多様性のある水際の保全と形成に努めながら、流下能力の向上を図るための河道掘削や樹木管理を行っていく必要があるが、河畔林の維持管理を考慮した河岸形状の設定に対する知見が不足している状況にある。以上を踏まえ、河道内の樹林化の抑制に効果的な河岸形状の設定方法や維持管理の省力化を念頭においた樹木管理手法について検討を行い、計画・工事・維持管理の各段階での指針となるガイドラインを作成することを目的として、平成21年度より本研究に着手した。平成21年度は、全道の一級河川を対象として河道掘削や伐開などの河道改変後の植生変化に着目した現地調査を行ったほか、既往の研究成果を基にガイドラインの骨子を作成した。今年度は、全道の一級河川において各種調査・検討を実施することにより、樹林化を抑制する水理諸量や冠水頻度等を把握し、高水敷の掘削高や河岸形状の検討を行った。最終的には、施工段階における樹林化緩和対策や、適切な伐採方法の整理、将来の樹林化を予測した樹木管理手法の検討等を行い、そのガイドライン(案)としてとりまとめるものである。なお、本研究は河畔植生が維持管理しやすい河岸形状について検討を行うものであり、掘削後の川幅縮小などの対策については対象としていない。 |