近年、我が国における自動車交通の発達はめざましく、これに合わせて道路整備もまた急速な発展をとげている。しかし、走行速度の高速化などにより交通事故件数は多くなり、その対策は急務である。土木試験場道路研究室では、この交通事故のうちすべりに関係する事故を減少させ、自動車走行の安全を確保するため、昭和42年にすべり走行試験車を製作し、道内各地の夏期および冬期において、種々の路面のすべり摩擦係数の関係について研究を行って来た。これらの調査の内、夏期路面で乾燥かつ異物などのない状態でのすべり抵抗値は、かなり良好な値を示しているが、雨などにより路面が濡れている場合には、著しい低下が見られる。このため我々が行っている、夏期路面のすべり抵抗値の測定は、散水車で測定区間を一様に散水し、路面のすべり抵抗値が最悪となる状態を想定して、湿潤状態で測定している。このような湿潤路面のすべりまさつ係数とこれに関係すると思われる要因のうち、輪荷重、タイヤの空気圧、速度および温度の変化などとの関係は、ある程度あきらかになっているが、水膜厚については、まだ明確にされていない。その原因は不規則な凸凹をしている路面上の薄い水膜厚を正確に測定することは非常に困難であり、適当な測定計器がなかったためである。しかし今回路面上の水膜厚を手軽に測定できる計器を入手することができたので、昭和50年度に路面調査の一環として行った、すべり抵抗値の調査に合せて水膜厚の実態調査を実施した。本文は、この調査結果を参考に、江別走行試験場において、水膜厚を人工的に変化させ、すべり抵抗値を測定し、水膜厚とすべりまさつ係数の関係について、取りまとめ検討したものである。 |