十勝ダムは、十勝川上流上川郡新得町字トムラウシに建設中の洪水調節、発電を目的としたロックフィルタイプの多目的ダムである。本体関係の工事は、現在、堤体基礎堀削、仮排水路、余水吐基礎掘削が進行中で、仮排水路については、ほぼ完了し、春の転流に備えている。さて、今回は、ダム完成後の主軸をなす放流設備の計画・設計について報告するが、十勝ダムの放流関係の概要をのべると、洪水調節は、ダムサイトでの基本高水流量Q=1,800m3/sのうちQ=1,450m3/sをダムに貯留(Q=350m3/s放流)し、下流帯広地点の河道流量を低減して、洪水による被害を防ぐ。各水位については、図-2にしめしてある。十勝ダムの放流設備としては、非常放水に用いる余水吐と主放水に用いる底部放水路の二つがあるが、余水吐については異常洪水流量のQ=2,600m3/s放流可能であり、昨年水理実験の報告(土木試験所)がなされているので、底部放水路を中心に説明する。この底部放水路は、堤体右岸底部を通るもので、基礎の一部をコンクリートにおきかえ、これを基礎岩盤とみなして、その内部に調節ゲートを設ける構造で、フィルダムの放流設備としてはこれだけの規模のものは、あまり例のない構造となる。したがって、いくつかの問題点があげられているが、水理実験の結果、高圧ゲートの選定、断面形状の決定などの経過を報告する。 |