治水事業において実施される拡幅、ショートカット等の河道流下能力の確保、ダム等による洪水調節等は水の流れを変化させることになるが、同時に輸送される土砂の流動特性にも変化をもたらすこととなる。河川の流速、流量の変化は、移動する土砂の粒径、移動量に変化をもたらし、その影響は海域まで及びこととなる。従って河川を管理していくためには、海域を考慮した連続的な土砂管理の考え方が必要である。しかしながら、河川及び海域を連続的に同時に調査している事例はほとんどなく、また、河川から流下した土砂の海域における挙動についても連続的な調査が十分になされていない現状にある。鵡川は、北海道内の一級河川の内でも洪水頻度が高く、また生産土砂量も多いことから、当研究所において河川及び海域における物質輸送の形態について調査が進められている。平成10年度には出水時を対象として物質移動調査が行われている。その結果、河川から海域に供給される大量の懸濁物質は、その約4割が河口部から約5kmの範囲に沈降し、河口周辺部の濁度が高くなること、海域における沈降物質は沖合い程粒径が小さく、栄養塩含有率、強熱減量が大きくなることがわかった。さらに、懸濁物質の平均粒径と粒子性の栄養塩等の水質成分にほぼ一定の関係があり、河川域と海域ではその関係があまり変わらないという結果が得られている。平成11年度には、海底に沈降堆積した物質の移動状況を把握することを目的として、8月下旬から10月初旬にかけて調査を行っており、本論文ではその結果について報告する。 |