世界的に地上気温が上昇傾向にあり、日本でも過去100年間に約1℃上昇している。こうした長期的な気温の上昇は、降雪時期の遅れや融雪時期の早まり、集中豪雨の"凶暴化"など、これまでの水文環境に変化をもたらすという懸念が指摘されている。記憶に新しいところでは、平成12年9月11日から12日にかけて東海地方を襲った豪雨は、気象庁名古屋雨量観測所で時間最大雨量93mm、総雨量567mm(年総雨量の約1/3相当)という記録的なものであった。こうした"非常に凶暴化した"集中豪雨が近年目立って発生しているという印象は強い。これを裏付けるデータとして、平成2年以降の10カ年において全国のアメダス地点で観測された1時間降水量が100mmを超える降雨の発生件数を示すと(図-1)、平成8年以降発生件数が急激に増加していることがわかる。上記のような年間を通した水収支の変化や短期的降雨の集中化に対しては、河川管理上あるいは水の安定的な利用上大きな関心を持つ必要性があることは明白であり、個々の流域における治水計画にどのように反映させていくかが、今後の大きな課題である。本検討では、まず、沙流川流域における近年の水文環境の変化を把握することを試みた。次に、年間を通した流出特性の変化が沙流川の環境上の特徴であるシシャモの生態環境に影響を与えていることを指摘し、資源保全上の見地からのダム操作の可能性について一つの考察を試みた。 |