平成9年6月に河川法が改正され、「河川環境の整備と保全」が目的に加えられた。これを受けて、新たに河川整備計画を策定することとなったが、環境保全が重要なポイントの1つになると考えられる。自然が豊かで広大な北海道では、明治以来、積極的な開発が進められてきたが、一方、自然環境に様々な影響が及ぼされてきた。今後、河川整備計画を立てるにあたり、上流域と下流域、そして陸域と海域が連携し、共通した認識のもと環境保全の取り組みについて話し合い、計画に反映させる必要がある。沿岸海域については、河川を介して流域の営みの影響を受けることになる。河川からは様々な栄養がもたらされ、豊かな海を支える働きがある反面、流域開発にも起因する出水時の濁質拡散が、沿岸の環境を変え、沿岸漁業へ影響を与える場合がある。濁質拡散の影響に関して、これまでは洪水時の操業停止や漁場の一時的な喪失を対象とするに止まっていた。しかしながら、漁業経営を考えるためにはさらに長期的な見通しが必要であり、その後の資源量の変動の有無についても無視する事はできない。濁質拡散の一時的な影響はある程度把握可能であるが、それを時間的に追跡する手法が整っていなかったため客観的な説明材料がそろえられず、十分な議論が出来ない状況であった。この様な状況を解消するため、河川水の海域拡散に関する新たな影響評価モデルの構築を行ったものであり、「平成9年度河川水の沿岸漁場への影響評価検討研究会報告書」(河川水の沿岸漁場への影響評価検討研究会、会長:北海道大学水産学部中尾繁教授)として報告されている。本論文では、このモデルを用いて鵡川・砂流川における海域の濁質拡散状況をとらえ、出水規模と沿岸海域への影響の関係を明らかにしようとするものである。 |