従来、河川水質は高度経済成長期の公害問題に端を発するいわゆる「典型7公害」(騒音・振動・地盤沈下・大気汚染・土壌汚染・悪臭・水質汚濁)のひとつとして利水安全度の面などからどちらかと言えば水質汚濁の問題に主眼が置かれてきた。水質汚濁の問題も今なお非常に重要な問題ではあるが、河川法改正により内部目的化された「河川環境の保全と創造」を考えていく上では、「エジプトはナイルの賜物」の言葉ではないが、河川水質を水質汚濁の観点からだけでなく、河川の物質輸送を表す指標として把握し、河川を介して輸送される種々の物質が河川生態系に及ぼす影響や海域環境に及ぼす影響等について山から海まで水系一貫の視点でその質と量を議論していく必要がある。しかし、これまで河川水質については水質汚濁問題に重点が置かれていたため公共用水域の水質測定計画にしても低水時観測がほとんどであり、大量の物質輸送が行われている洪水時の水質の連続観測がなされた事例は少ない。本報告では鵡川において生起した平成9年8月10日及び平成10年4月13日、8月28日洪水時の現地水質連続観測から河川環境を考える上で特に重要と考えられる窒素、リン、SSに着目して洪水時の物質輸送について調査した結果を報告するものである。 |