農村の高齢化が進行し、農家や担い手が急速に減少していく中で、農村において未利用地・低利用地が増加し、土地利用の荒廃が進んでいる地域が見受けられる。農村地域における土地利用の荒廃は産業としての農業の維持を困難とするばかりではなく集落機能の崩壊をも意味している。このような状況のなかで生産基盤を整備し、将来担い手が営農をしていくための条件整備を図るための計画を事業主体が立案し農家に提示する従来の手法では、農家は他人事のように反応し、事業完了後においても集落として望んだものが出来ないことなどもあり、結果的に農家が減少し、農地が荒廃することも考えられる。このため、農業農村整備事業、特に面整備を中心とした農地再編整備事業を実施していくためには、農家一人一人が将来の個人のこと、集落のことを考えて事業に参加する必要があり、自分たちが考えたことであれば、その目標達成のために努力していくと思われる。現在調査を進めている国営農地再編整備事業豊浦地区においては、事業主体から土地利用計画・整備計画を農家に提示するのではなく、集落単位で農家が独自に組織した土地利用計画委員会を学識経験者・関係機関(町・農協・農業改良普及センター・建設部)がバックアップしながら、将来の土地利用、地域農業の維持システムを検討し、この結果を事業計画に反映させ農家に提示していく手法をとり、地域農業の維持・振興システムへの支援を図るとともに事業化へ向けた合意形成を進めている。本報告ではこれまでの経緯と手法について報告するものである。 |