河川の各領域において様々な治水、利水対策がとられている。これらの対策についてその領域においては最善の方法がとられているが、流域一貫した視点で見た場合、矛盾を生じている場合も少なくない。とくにダムや砂防ダムとその下流での河床低下、さらには海への土砂供給の減少等が社会問題としてとりあげられている。このようなことから、河川における水と土砂の流域一貫した管理計画の策定が急務となっている。特に土砂のなかでも微細粒子であるSSは栄養塩を吸着していることが報告されており、出水時には短期間で大量に輸送されることを考慮すると、河川環境を考える上でその輸送機構を把握する必要がある。鵡川の中、下流地点における観測結果により、SSの出水時の挙動について、次のような現象が生じていることが報告されている。上流の発生源から河道内に供給されたSSは、発生源下流の河岸、高水敷に堆積する。次の出水によって浮上することにより、洪水流とともに流下し、下流のある地点において堆積する。この現象の繰り返しにより、上流域で発生したSSは順次河道内を流下し、海に到達している。すなわち、河道内に貯留されたSSが出水時の輸送量に寄与している可能性が高いと考えられている。しかしながら、SSの発生源と考えられる山地から河川へ供給、山地流域における動態は明らかにされていない。そこで、本研究は、99年7月出水時に鵡川の上流域に位置するパンケシュル川(更正橋)で得られた観測結果を中心に、出水時における河道内へのSSの供給、輸送量について検討を行った結果を報告するものである。 |