河川環境に配慮した「多自然型川づくり」を河川改修の基本理念とする河川法の改正が平成9年に行われた。また北海道においても、平成6年に制定された「川づくり基本計画」のなかに、多自然型川づくりの考え方が取り込まれている。このような変化を受け、河川の改修において環境に配慮した施工法が重視されるようになり、景観や自然環境に調和した河川資材として木材のニーズが高まっている。木材を河川環境で使用した場合、通常の屋外使用環境である接地条件下とは腐朽菌の生育状況や腐朽形態が異なることが予想されるが、このような河川環境における木材の耐朽性についてはほとんど明らかにされていない。一方、1997年2月から実施された排水基準の強化によって、使用される防腐剤がCCA(クロム・銅・ヒ素化合物)からAAC(アルキルアンモニウム化合物)やACQ(銅・アルキルアンモニウム化合物)などの新規薬剤へ急激に移行しているが、これら新規防腐剤の河川環境における効力も十分には検討されていない。また、木材を屋外接地条件下で使用する場合の防腐処理基準は、日本農林規格(JAS)や(財)日本住宅・木材技術センターの優良木質建材等認証規定(AQ)に定められているが、河川環境で使用する場合にこれらの基準の適用が妥当であるのかどうかも明らかではない。そこで、河川資材として使用される木材の信頼性の向上、およびJASやAQ等で規格化されていない木質系河川資材の防腐処理に関する基礎的な知見を得ることを目的として、既設の木質系河川資材の腐朽状況を調査した。 |