超偏平の大断面とは、平成8年2月の岩盤崩落事故により被災した一般国道229号余市~古平町間の豊浜トンネルを本復旧するために建設されている新たな豊浜トンネル工事に付随して発生したものである。このトンネル建設工事は、現豊浜トンネルとセタカムイトンネルの2本の既設トンネルをバイパストンネル(新たな豊浜トンネル)で結び一本のトンネルにするものである。トンネル建設の最大の特徴は、2本の各トンネル中間部における約120mの接合(分岐)区間に有る。接合部(分岐部)では、現道トンネル内で2車線一般交通を確保するという条件が付けられているほか、交差角が小さく(約15度)、新旧トンネルの各々2車線分の断面が合流するため合流断面の最大値は、掘削断面積174㎡、掘削幅23m、偏平率0.41の超偏平大断面(大断面支保パターン大断面Ⅱの約1.4倍)となり、標準的な掘削方式や支保構造を適用するとはならず、各種の適応要素、条件の整理や掘削工法、補助工法等の技術検討、数値解析等が成されている。本稿は、過去2回にわたる技術報告(分岐部の設計、施工思想の編と施工方法の工夫及計測結果の編)を踏襲し、この様な特異性の高いトンネル建設工事においても適切な分割掘削と補助工法及び計器観測管理の効果等によりNATM理論が適用されるとともに当初(設計、施工)計画の妥当性を計器観測結果に基づき報告するものである。 |