酪農をはじめとする畜産業における家畜排せつ物は、経営規模の拡大とともに適切な処理と利用が困難となり、一部地域では野積みや素掘り貯留などに起因して水質汚染などの環境問題の発生を来している。北海道は全国の乳牛頭数の47%にあたる約88万頭を飼育する大規模酪農地域である。北海道全域を平均するとすべての家畜糞尿を還元できる耕地面積は存在するが、大規模酪農の大半が北海道の東部や北部地域に偏在しており、これらの地域での急速な規模拡大に伴い、家畜排せつ物がもたらす地域環境等への悪影響が懸念されている。また、農作業の省力化を目的として、栽培作物の単一化と化学肥料や農薬の多投が進み、農地の有機物不足が土壌の疲弊を招いており、健全な農地を基盤とした持続的な農業の存続が危ぶまれている。このため、平成11年11月に農業環境3法と言われる「家畜糞尿の管理の適正化及び有効利用の促進に関する法律」、「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律」及び「肥料取締法の一部を改正する法律」が制定された。そこで、北海道開発局ではこれら家畜糞尿の課題に総合的に対応するため、肥料資源とエネルギー資源の循環利用を図る共同利用型のメタン発酵施設(バイオガスプラント)を中核とした「積雪寒冷地における環境・資源循環プロジェクト」を平成12年から始めた。家畜糞尿を主原料とするバイオガスプラントはデンマークやドイツではかなり普及しているが、北海道で現在稼動中のバイオガスプラントは数ヵ所の小規模なもので、比較的大規模なプラントでも今年から稼動し始めた2施設で、本プロジェクトのように共同利用型のものは皆無である。このため、北海道で共同利用型のバイオガスプラントを中核とした糞尿等の資源循環システムの実用化のためには、北海道の積雪寒冷な気候条件、営農条件あるいは社会条件での解明すべき技術的、経済的な実証的課題が残されている。平成12年度は別海と湧別に施設や試験團場を整備するとともに、施設稼動後の基礎となる調査研究を実施したので、全体計画とともに今年度の調査成果を報告する。 |