北海道東部の軽しょう火山灰土壌地域では、降雨・融雪出水に起因する農地での土壌流亡が問題となっている。このことは、表土の流出による営農障害の発生のみならず、下流の河川・湖沼等の水質環境を悪化させる原因となる。農地から流出する土砂は、相対的に細粒質のものの割合が高いため、排水路を介して水系へ流入すると、河床堆積物となりにくい「ウォッシュロード」と呼ばれる形態で流下する部分が大きく、沈降・集積等による対応は困難である。したがって、とくに農地と排水路が隣接する箇所においては、土砂を排水路へ流入させないことが重要である。国営総合農地防災事業網走川上流地区では、沈砂池や緩衝林帯などの整備とあわせて、「排水路保護工」と呼ばれる、暗渠工を応用した土砂流出抑制施設が計画されている。これは、農地と排水路との境界部に暗渠管を埋設し、埋戻し部の火山灰をフィルター材として、細粒土砂の排水路への流入を抑制するものである。本報では、排水路保護工での使用が予定されている火山灰について、簡易な試験機器を用いた室内ろ過機能試験を行い、火山灰が有するフィルター効果の検証や、施設管理面における課題について検討した結果を報告する。 |