1992年に開催された「環境と開発に関する国際会議(地球サミット)」において、地球環境と開発問題に対し、「持続可能な開発」が基本理念とされ、その一つとして「生物の多様性の保全」が確認されている。こうした背景のもと、港湾・漁港の整備のおいても周辺に生息する生物との共生を目指して、「環境との共生を目指した港づくり」や「自然調和型漁港づくり」に取り組んでいる。特に、北海道は豊かな自然環境や水産資源に恵まれ、港湾・漁港が漁場と近接して利用されている。そのため、北海道開発局では水産振興上からも、コンブ、ヤリイカ、ホッキガイなどの水産有用生物を対象として、自然環境と共生する沿岸構造物の開発に取り組んできた。しかし、防波堤などの沿岸構造物の周辺海域には、こうした水産有用生物以外にも様々な水生生物が生息している。その中の一つで底質中に生息するマクロベントスは、有機物(生物の死骸であるデトリタスを含む)を摂食することによる海水や底質の浄化の役割や、上位捕食者の餌となる役割など海洋生態系において重要な役割を果たしている。また、閉鎖性内湾などにおいては、底質などの自然環境に関する生物指標としても知られている。しかし、開放性砂浜域における底質などの自然環境と底生生物の関係についての知見はほとんどないのが現状である。本文では、苫小牧港(東港)と石狩湾新港の現地調査結果を基に、開放性砂浜域において防波堤などの沿岸構造物の建設が周辺の自然環境に与える影響について、底生生物の生息状況から検討した結果について報告する。 |