苫小牧港で建設された防波堤で、昭和46年以降漁獲量が減少傾向にあったハタハタの産卵が確認された。これは、苫小牧港の防波堤に形成した藻場が、天然岩礁域の藻場と同様の効果を持っていることから示唆している。もともと、港湾や漁港で建設される防波堤等の沿岸構造物は、水産生物の生息場となる環境共生機能が備わっており、「海藻類が生い茂り、魚介類が集まる空間」になることは、これまで多数報告されている。また北海道開発局では、防波堤や防砂堤の本来機能に加え、藻場の創出を目的とした複断面防波堤の建設や、ヤリイカの産卵礁の機能を付加した被覆ブロックの設置等を各地で行ってきている。今回、苫小牧港の防波堤で確認された「ハタハタの産卵」についても、新たな環境共生機能が付加されたことはもとより、その産卵場が形成される環境条件について明らかにすることにより、水産業(ハタハタ漁業)へ寄与できるものと考えられる。そこで、苫小牧港周辺のハタハタの産卵について、平成8年度から現地調査を継続的に実施し、平成8、10年度の本発表会で産卵状況等についての報告を行った。その報告の中で、苫小牧東港の内防波堤周辺には、ハタハタの産卵基質として適しているウガノモクと呼ばれる海藻の分布が多いことが、産卵場として機能した一つの要因であると考察した。しかし、内防波堤周辺にウガノモクが多く分布する理由については、これまでの調査からあまりよく分かっていなかった。本論では、内防波堤にハタハタの産卵場は創出された要因について明らかにするため、ウガノモクの生育環境条件について着目し、光環境や波浪環境調査を行った結果から、ハタハタの産卵場の環境特性について報告するものである。 |