港湾・漁港の拡張に伴って港奥部の海水が停滞し、その結果、港内の水質悪化やヘドロの沈殿などが生じ、悪臭の発生や海水の利用に支障などが生じる場合がある。これを解消する方法として、有孔堤などの海水交換機能を持った防波堤や護岸が考えられ、実際に施工されている。北海道においても外力に波力をりようした海水交換型施設として、逆止弁付き有孔堤(天売港)、ベルマウス型有孔堤(瀬棚港)、消波ブロック被覆型有孔堤(浦河港)等があり、その1つに様似漁港の遊水部付有孔護岸がある。これは堤体に導水孔を設け、前面に遊水部を設置することによって、遊水部内で生じる水位上昇を利用して外海の海水を港内に流入させて海水交換を促進し、港内の水質改善を図るものである。この海水交換の特徴として、佐藤らは①比較的小さい波高でも海水交換が可能なこと、②周期の影響が小さいこと、③海水交換能力は遊水壁天端が水位と同じ場合に最大となることを報告している。また、山本らは同様の海水交換機構を持つ潜堤付防波堤について前述の3点に加え④遊水部の形状を工夫することにより波向影響を制限できることを報告している。しかし、これらの海水交換施設の施工後の海水交換特性やその効果についての報告例はあまり多くない。本文では、様似漁港の遊水部付有孔護岸周辺で、流動及び水質変化を確認するために行われた調査結果に基づき、海水交換特性と水質変化について報告する。 |