北海道では、1996年に函館港が、1999年に小樽港、室蘭港、釧路港の3港が、開港から100年を迎えた。20世紀は、これら4つの港を始め、「国内・外へ向けた物流」や「国内の食料需要を満たす漁獲物の陸揚げ」の拠点として、多くの港湾、漁港の建設が行われ、海象・気象などの自然の猛威に対応するため、様々な技術が駆使されてきた。しかし、1992年に開催された「環境と開発に関する国際会議(地球サミット)」において、地球環境と開発問題に対し、「持続的な開発」として「将来の世代の要求を満たしつつ、現代の世代の要求を満足させるような開発」という概念が採択された。さらに、人類を含む多くの生命を育む惑星「地球号」の将来への憂慮や、環境問題に対する関心の高まりを背景に、開発分野においても、自然環境と生態系に配慮する考え方が浸透しつつある。特に、豊かな自然に囲まれた北海道の港湾・漁港は、漁場に接近しているため漁業活動との協調を図るうえでも港湾・漁港構造物に環境共生機能を副次的に付加することが重要である。そこで、北海道開発局では、港湾・漁港構造物を建設するに際し、環境に配慮し周辺の水産生物と共生するための技術の実用化を目指し、環境共生型沿岸構造物の体系化に取り組んできている。標記テーマについては、平成7年度から研究を進めているが、第一報では、現地調査結果に基づいて構造物と生物の関わりについて整理し、構造物開発の方向性について検討を行った。第二報では、港湾の海水交換を促進するために開発された有孔堤の水理模型実験及び現地実験から構造物の水理特性と設計法の考え方を報告した。第三報では、現地で試行的に行われている環境共生型沿岸構造物を体系的に整理し、その成果をモニタリングして今後の問題点や課題について検討を加えた。第四報では、環境共生型沿岸構造物を事業化するにあたっての要点を整理し、傾斜堤に環境共生機能を付加した場合の設計法を水理模型実験に基づき報告した。今年度は、港湾・漁港の計画段階で、より効果的な環境共生機能の付加箇所を提案することを目的に、北海道の代表的な水産生物である、岩礁域の「ホソメコンブ」と砂浜域の「ホッキガイ」を対象として、沿岸域における構造物の建設がこれら周辺生物の分布に及ぼす影響について、その予測手法の開発における現状を課題について報告するものである。 |