漁港における漂砂現象については、水深5~6m程度の砕波帯内に港口を有するため漂砂により航路及び港口の埋没が起こること、また周辺河川の流出土砂の影響を受けやすいこと等がよく指摘されるが、こうした点に加え北海道の漁港においては日本海側と太平洋側では大きく海象条件が異なりこれが漂砂現象に反映される。すなわち日本海側では夏秋期と冬期では来襲波浪の波向きが異なる。周期はせいぜい10秒台前半であるが比較的高波浪が発生する。従って漂砂現象の調査・解析においては波向き変動による地形変化の累積を適切に評価することが必要になる。また太平洋側についてはうねり性波浪が来襲する。従って浅海域の屈折効果により海岸線に直角に入射する波浪の来襲が多く、波高に比較して波長が長いため漁港の港奥部に及ぶ地形変化を引き起こす。漂砂対策は漁港の建設及び維持管理上大きな課題であるが、現実的には漂砂メカニズムの解明自体が海岸工学上の先端的な技術的課題であり未解明な点も多々残されていることから、検討地域の漂砂現象の本質を既往地形変化資料等の調査より適格に判断すると共に、現状の漂砂解析の技術レベルの限界を見極めつつ、漂砂対策の評価を行う必要があると考えられる。本稿では、漁港における漂砂対策工を検討する際、漂砂解析手法を選択する判断となる事項を既往文献等の資料より紹介し、そのうえで北海道開発局における漂砂解析の実施事例についてその概要を紹介する。 |