札幌近郊の牧場より採取した乳牛スラリーを嫌気ならびに好気発酵させ、新鮮スラリー、嫌気発酵消化液および好気発酵消化液の散布に伴う窒素動態を室内試験で比較検討した。
その結果、以下のことが明らかになった。
① いずれの発酵処理もスラリーの乾物率を低下させた。発酵処理に伴う乾物率の低下は散布時の作業性向上の面で有利と考えられる。
② 嫌気発酵処理はスラリー中のアンモニア態窒素/全窒素比を上昇させ、スラリーの窒素肥料としての即効性を向上させた。
③ 好気発酵処理はスラリー中の窒素成分の損失を招いた。したがって、好気発酵消化液の品質向上には、発酵中の窒素の空中揮散を抑制する必要がある。
④ 新鮮スラリー、嫌気発酵消化液、好気発酵消化液ともに土壌に散布した場合、アンモニアの揮散は生じるがその量は少なく、これらの散布により添加された全窒素量を明らかに上回る土壌中全窒素の増加が認められた。
⑤ ④で述べた全窒素の増加量は、嫌気発酵消化液>新鮮スラリー>好気発酵消化液の順に大きく、土壌の窒素肥沃度増大効果は嫌気発酵消化液が最も優れていると考えられた。
⑥ ④で述べた土壌中全窒素増加量/供試液由来全窒素量の比は、好気発酵消化液>嫌気発酵消化液>新鮮スラリーの順に大きく好気発酵消化液も発酵中の窒素揮散を抑制できれば、優れた窒素肥料となり得ると推察された。
⑦ 液面からのアンモニア揮散は嫌気発酵消化液で最も多く、新鮮スラリーおよび好気発酵消化液でも土壌散布の場合より顕著に多かった。したかって、いずれのスラリー処理物の場合でも、貯留中のアンモニア揮散対策が重要であると判断された。
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