個人牧場に導入された乳牛ふん尿を主原料とする発酵施設の運転開始から403日間の(2000年3月7日~2001年4月13日)観測計測データを用いて、原料の性状変化を明らかにした。
1) 発酵槽の液温は厳冬期を除き、2℃程度の変動はあるが、中温発酵の適温である37℃を保持していた。
2) 原料スラリーの希釈はバイオガス発生の減少をもたらし、少量のミルク廃液の投入はバイオガス発生の増加をもたらす傾向があった。
3) バイオガスの消費量(=発生量)は原料1㎥当たり33.1㎥と、当初計画(32.3㎥)を上回る良好な値であった。
4) 発電は、バイオガスと補助燃料の軽油で需要に即した運転が行われており、バイオガス1㎥当たりでは1.5kWhの発電量であった。
5) 本稼働後のバイオガス中のメタン濃度は、理論値である約60%を保持していた。
6) 二次発酵槽に直接原料が投入された後及び厳冬期に硫化水素濃度が高まる傾向が見られた。このことは生物脱硫の反応が緩慢で、脱硫が硫化水素発生に追いつかないことが原因と考えられた。
7) スラリーのpHは流入槽ではpH6.5~7.0、他の3槽ではpH7.5~8.0と明らかに上昇していた。pHの変化と揮発性脂肪酸の濃度変化は類似した傾向であるが、相関関係は明らかではなかった。
8) スラリー中の揮発性脂肪酸濃度は、流入槽で4000~8000ppm、他の3槽では1500ppm未満と明らかに差があった。
9) スラリー中の有機物含量は流入槽→一時発酵槽→二次発酵槽→貯留槽と、発行の段階が進むにつれて減少しており、有機物の無機化の進行が確認できた。
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