1990年代の北海道における3つの地震により、盛土構造物に大きな崩壊が発生した。これまで著者らは、1993年の釧路沖地震における道路盛土の大規模崩壊箇所について、被災時盛土内に存在していた浸透水を素因とし、地震動による過剰間隙水圧の発生が崩壊の要因として支配的であることを動的遠心模型実験により明らかにしている。また、浸透水が存在する道路盛土の地震時安定性の評価手法についても検討を行ってきた。
ここでは、釧路沖地震での道路盛土崩壊箇所を事例にとり、これまで検証した評価手法の適用性を検証し、その際、重要な要因となる盛土内における過剰間隙水圧の発生量の予測について検討を行った。その結果、以下のことが明らかとなった。
① 浸透水が存在する道路盛土の地震時安定性は、地震時の盛土内に最大発生し得る過剰間隙水圧と、盛土地表面最大加速度をかなり低減した水平震度を同時に考慮したすべり安定計算により評価できる。
② 動的遠心模型実験結果から盛土内における最大過剰間隙水圧の発生量は、液状化抵抗率との経験式により予測可能である。その際、地震時せん断応力比を求めるための水平震度を、予想する地表面最大加速度の0.5倍程度に相当する震度とするのが妥当である。
③ ①のすべり安定計算に用いる水平震度は、予想する地表面最大加速度の0.1~0.3倍に相当する震度を用いる必要がある。 |