北海道における農業水利施設の造成は江戸時代末期に始まり、 現在では、 農耕地面積は11,750(全国比約25%)となり、 国内の一大食糧生産基地としての農業面での社会資本の投下は大きい。 灌漑用水を供給する用水路の整備の進捗の達成度は大きい。
用水路の建設技術は、 北海道の厳しい冬期環境や現場環境に適するものとして、 また、寒冷な環境から形成された泥炭地域など特殊な地盤条件にも適合するものとして開発されてきた。 また、 建設技術と双対して設計技術も確立された。 従来、 水田地帯では開水路、 畑地帯等では管水路のシステムが主として採られ、 農業開発の着手が早かった地域では、 二次的・三次的整備時に水利的観点や構造的観点から用水路施設の建設技術や改
修技術が見直されてきている。 このような推移のなか、 今後は、 社会資本で整備した灌漑用水路の機能を延命するための技術開発が必要とされる。
農業用水路は地域の財産としての協同的管理がなされてきた。 そのため、 用水供給の役に限らず、 「親水」 の場や土木技術の歴史を示す場でもある。 水利施設の維持管理や更新を考える場合、 利用者・地域住民のコンセンサスも重視し、 過去に採用された水路の設計思想を再考することも大切であることが示唆される。
本論では、 農業用水路の技術開発の経緯を要約し、 旧水路の補修・補強の技術の留意点にふれた。 |